5月を振り返る

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今日も良い日和だなあ、とのんびり構える日曜日。
昨日は音好きの会合に出席し、折からの神田祭の太鼓の音もシャットアウトした会場で、ブックシェルフSPの対面配置による音場の作り方や、マエストロ作製のフォノイコによるMMカートリッジおよび交換針による音質比較などを愉しんできた。
もちろん一番のお楽しみは、二次会の宴席(笑)
この歳で、他愛もなく杯を酌み交わすお仲間がいることに感謝。

ところでその会合で聴かせてもらったSHUREのMMカートリッジ、M75, V15Ⅲ、V15Ⅳ、そしてOrtofon VMS20Eの音の良さには、ちょっと驚いた。
V15Ⅲはアームとの相性がもひとつだったようで、真価を発揮できなかったが、V15Ⅳ特にJICO の限定生産のSAS針を装着したそれの音は、MMの太さ、直截さに分析力が加わり、一聴の価値ありの音。
もっとも軍配を上げろと言われればトリを務めた、「これぞアナログ」ことOrtofon VMS20Eになるのだが。
そんな予定調和のシナリオ、つまらないじゃないですか。え?そうでもない?うーん。

それはそれとして、JICO(日本精機宝石工業株式会社)という会社が、MM替針というニッチなマーケットで、ルビーやサファイア、ボロンのカンティレバーにマイクロリッジチップを埋めるという、涙ぐましくも先端的な商品を開発していることを知り、感銘を受けた。まだまだアナログの未来は明るい。頑張れ!JICO。https://www.jico.co.jp/

ところで、しばらく前に同じような企画でMMカートを聴かせてもらった時に、自宅で眠っているSHURE V15ⅢやELACなどのMMカートを聴こうとアームにつけたところ、モーターを回すとジーッというノイズを拾って使い物にならなかった。

今回の会合でフォノイコ・マイスターにその件を相談したところ、Thorens TD124のモーターのアースが落ちているか確認するように言われたので、意を決して重たいplinthを持ち上げ、裏返してみる。

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黄色い矢印の先が多分モーターのグラウンドと見当をつけ、アース線をはんだ付けしてアームのアースに落としてみる。


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するとどうだい、ジーッというノイズがピタリと止んだ。いや珍しいねえ、対策がピタリと決まるなんて。
(・・と人様から教えてもらった対策を自分の手柄のように吹聴する)

気分良くSHURE V15Ⅲをヴィニルの上で滑らしてみる。

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・・・実に存在感のある、彫りの深い音が耳に迫ってくるじゃあないか。
ええ~、SHURE V15Ⅲってこんなに良い音だったっけ?

ヴィニルはPablo盤 Count Basie "Baise Jam"だ。会合で試聴盤としてかけた時はさっぱり音もリズムも前に出てこず、音の密度もスカスカで、推薦者として面目を失ったというのに、ホームに帰るとここまでブイブイいわすのか。なんたる内弁慶。

考えてみれば同カートの音の記憶は、DENNON普及版プレーヤー、LUXMANプリ~6CA7PPアンプ、JBL Apolloという組み合わせの音だったので、現行と比べるのはフェアじゃない。
いつのまにやら「アナログオーディオならMCカートリッジ」という定説を鵜呑みにしていた、というのもある。
いやあ、見直したぜSHURE V15Ⅲ。といったところで、時すでに遅しでディスコンじゃないか。(^^ゞ

それにしても"Basie Jam"の再生で言えば、我が家のカートで右に出るものが見当たらないぞ。MCカートの皆さんには高い用心棒料払っているのに、なんたる体たらく。笑

勢いに乗って、LED ZEPPの1st、バーンスタイン指揮NYPのチャイ5番など定番を聴いていくと、オケはやはりLyraに解像度と低域表現で一歩譲るようだ。

うーん、なるほど。包丁と一緒で、捌くものによって得物も変わるというわけだ。

いずれにせよ、眠っていたものが真価を発揮し始めるなんて、気持ち良いじゃあないか♪
折を見て、JICOのSAS(Super Audio Stylus)も一度試して見たいと思うのであった。


ところでオーディオといえば、五月の連休後半にお邪魔した、Oさん宅とGRFさんのお宅での体験を、記しておかねばならない。

お二人はGerman Physiksの無指向性システムを使いこなし、ソフトウェアでもテープ、ヴィニル(GRFさんのみ)、ディジタル、PCオーディオと幅広くチャレンジし、演奏会にも足繁く通うこの道のツワモノなのである。

僕は名人、ツワモノと聞くとヒエラルキーや権威を連想して俄然腰が引けてしまうのだが、今回は親しくしてもらうOさんの口利きで、試聴希望者が門前列をなす?GRFさんの音を聞く機会が巡ってきたので、臆せず飛び込んでみたのだ。

Oさん宅を訪問するのは2度目だが、前回とはプリアンプが変わるなど進化を遂げている。
しかし出てくる音のエッセンスは不動で、僕にとっての印象を一言で言えば、「浸透力のある音」である。
家具類の占めるスペースを除くと実質6畳ほどの空間で、German Phisiksならではの「音場感」を出すべく、細心の注意を払って組み立てた音、というイメージだ。
かといって神経質な音のかけらもなく、あくまでナチュラル。
前回は足元からひたひたと音が満ちていく感覚があったが、今回はサウンドステージがそのまま目の前に現れる。
ボリューム・コントロールは、再生する楽曲に最適な音場感を出すべく、慎重にレベルを選んで行われる。
どこかの家のようにこれ見よがしの低域のデモンストレーションなどは致さないのだ。(-_-;)

我が家の直線的に音を放出するシステムとは違う、音場型のシステムの音質を堪能させていただいた。

Oさん宅の試聴は、次にお邪魔するGRF邸の和室の音の、実は伏線であり、そのコンセプトを理解するうえで大いなる助けとなるものであった。

GRF邸和室の音は、オーディオにおいて茶の湯で言う侘・寂のような「美意識」を理解できるかどうかを問う、お点前の音である。
「美意識」はオーディオを愉しむ上のクライテリア(規範、価値判断基準)と読み替えても差し支えない。

そこではホーン型もベンディング・ウェーヴ型もない、聴く者の原音体験とその再生こそが本質というコンセプトが提示され、実際にそれを聴くものの腑に「すとん」と落とす音が響いているのだ。

Oさん宅同様、自然で浸透力の強い音だが、ボリュームコントロールはより自在で、開放的な音を聴かせていただいた。

その後通された広大なリスニングルームには、その広さ・高さといい、据置かれた機器類といい、圧倒されるが、何より記憶に刻まれるのはその音だ。

そこで聴かせてもらった音は、今まで僕がオーディオで出せると思っていた音をはるかに凌駕するもので、何かを強調するでもない、あくまで自然な、それでいて圧倒的な音場感に体ごと包まれるという体験であった。

以下はGRFさんに書いた感想分の抜粋だ。
「それは『再現』『再生』を超えて、『創造』というレベルに近いのではなかろうかと舌を巻くほど、One and onlyな音楽でした。
なかでも強く印象に残ったのは、メジューエワのリスト『エステ荘の噴水』で、その煌びやかな音符の群れたるや、題名通り噴水のように吹き出して部屋中をクリスタルな音色で満たすのでした。ニューヨーク・スタインウェイだから明るめの色調、などと陳腐な感想は言いたくもなく、ただただその光沢にあふれた色彩をまとった音の粒子が室内に吹き出し飛散し降りてくる様を眺めていました。」

視覚的には、釜山海雲台のRYUさん宅の、海を見渡す広大なリヴィングルームで聴いたWesternの巨大なホーンシステムにも圧倒されたが、GRF邸の場合はやはり音そのものに感覚が揺さぶられるのだ。

事前の心配はどこ吹く風、デブリーフィングでは楽しく音楽談義に参加させていただいた。

都内閉じ籠りの5月前半であったが、かようにシニアの目(耳)さえ開かせる刺激的なひとときもあり、合格じゃな。(笑)


by windypapa | 2019-05-13 17:29 | オーディオ | Comments(0)

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