あけましておめでとうございます。
今年が良い年になりますように。
今年もおせちとふるさと納税の毛蟹を肴に新年を祝う。
さて久々に子供(といっても30過ぎの独身のおっさん)3人が揃った我が家の正月休み、水入らずでゆっくり過ごせるわけもなく、TVが占領され、例によってくだらんバラエティとカレッジフットボールのボウルゲーム中継に辟易(フットボールは好きだが、何試合も延々と観戦する趣味はない)していた元旦の昼前、それはやって来た。
S急便のお兄さんが持って来た荷物は、正月のリヴィングルームを通過するには無粋すぎ、ガレージを開けて地下に置いて貰う。
さてどうするか。
正月早々、開梱するのは憚られたが、大きなダンボール箱を廊下に置いたままも気が利かぬように思えたので、思い切って封をあけた。
厚手のダンボールとエアーキャップで厳重に梱包されたそれは、TAD TL1601a。TADの誇る40cmウーファーだ。入手したのは業者によってリコーンされたものだが、初期スペックを抜粋すると下記の通り。
最低共振周波数 | 28Hz |
再生周波数帯域 | 28Hz~1kHz |
定格入力 | 150W |
最大入力 | 300W |
出力音圧レベル | 97dB/W/m |
現行ウーファーの周波数帯域が35Hzからなので、7Hz「下」の世界を覗くことになるし、TAD TD4001/TH4001のExclusive 2402の純正ペアの再現でどういう音に変わるのか(変わらないのか)、興味津々なのだ。
アポロの小さなエンクロージャー(670 x 670 x 460mm外形)の容量の問題があるが、件のExclusive 2402の箱(ホーンを除けば外形概略660 x 500 x 480mm)を見れば、それほど容量を必要とするようにも思えない。ええい、物は試しだ、という実にいい加減な発想で呼び寄せたのがこの正月の賓客なのだ。
廊下に広がった梱包資材の山を片付けて、TL1601aをリスニングルームに持ち込み、アポロのエンクロージュアに取り付ける。
今までの15"ウーファーよりTL1601aの方が少しだけ外形が大きいため、4箇所で止めるクランク型の留め具が二つしか止められない。
仕方なく下部2箇所を止めると、自重と留め具、そしてエンクロージュアの止め板でうまく固定することができた。\(^o^)/
さてさてお立会い。いかなる音が出ることやら。
手早くDELAのデジタル音源から聴いてみよう。まずは定番のCarpentersハイレゾ音源96kHz/24bitから、"Yesterday Once More"
再生が始まって、しばらく「あれれ、ウーファーから音が出ていない?」と慌てたが、よく聴けばちゃんと出ている。
それだけウーファーとスコーカーの音質がぴったりと一致していたということなのだ。
こう書くといかにも間抜けに聞こえるが(実際そうなのかもしれないが)、それは驚くほど一体感のある音色なのであった。ううむ、さすが純正の組み合わせだけあるなあ、とすでに感心している。(^_^;)
そしてカレンの歌声を聴いてさらに驚きは深くなる。
彼女の口がずっと小さくなった!
今までは情報量は多いのだが、エコー成分?も多く、極端に言えば風呂場の歌のような(笑)塩梅だったのだ。
いや、誇張が入っているのは確かだけど。(・_・;
それでも「滲み」のなくなったその音は、実にソリッドかつ切れ味がよく、アキュレートだ。
かと言って分析的な音ではなく、実に軽やかで、刺激的で、「蝶のように舞い蜂のように刺す」という往年のボクサー、カシアス・クレイのパンチを思い起こさせる。
その低域は、単に7Hz下まで伸びたに止まらず、弾力のある空気圧と「音色」が加わっているのだ。
こんなパンチを食らったら、「イタリアの種馬」だってノックアウトだろう。
そう、「音色」だ。
それは、中域のTD4001と一体化した、ソリッドで乾いた、ウェストコーストの香りがする音色だ。
この音色のために、3 way駆動を忘れさせて全体の調和が揃い、音楽性が増して聴こえるのだ。
同時にそれは、なぜか音の奥行きまで深く聴こえさせる。
単に低域が出ただけなら、オーディオ的なギミックを満たすソースを聴いて終わりだが、それだけでない「音楽性」をこのTAD Brothersは「持って」いるのだ。
それはTD4001スコーカーのもたらす音数と色彩感の豊かさであり、音の実在感の向上であり、両輪となってそれを支えるTL1601aの下働き効果なのか。
例えば、クラプトンのアンプラグド。柔らかい舞台の軋む音が低域に被る超低域のノイズは知られたところだが、断片にとどまらずそれが通奏低音のように響いてライブ感を増幅させる。
例えば96kHz/24bitのカラヤン指揮BPO ”Beethoven Symphony #9”の第4楽章。今までのようにコントラバスの咆哮を喜ぶだけでなく、4人のソリストの絡み合う声のテクスチュア、そこに重なる合唱の奥行き、そしてそれらを包み込むオーケストラの包容力を楽しむ。
そして最後の一音が発せられた後の空気の振動、余韻! 残り香に触れられるかのようだ。
オーケストラは、カラヤンの操るタクトに従って舞う魔法の絨毯。
それは今までなかった分離の良さ、帯域のつながりの良さがもたらすもの。
例えばゲルギエフ指揮マリインスキー管の「シェヘラザード」第1楽章。
大巨獣が登場するような壮大な導入部は、さらに分厚くなった低域の「鳴り」で迫力がいや増し、加えて今までやや荒れ気味に聞こえていたVnパートでさえも、一つ一つ丁寧に描き出され、聞き苦しはもはや跡形もない。
例えばBad Plus "Lithium"の尋常ならざるタイトなベースとバスドラムの音と押し出し。未だかつてこれほど引き締まったリズムセクションの音は聞いたことがないぞ。録音現場のモーテルの部屋の壁を突き抜けそうじゃあないか。カオスの中に増殖する音。ピアノまで新たに調律されたかのように聞こえないか?
例えばコステロ"North"の"When It Sings"のバスドラムの響き。単に「出ている」だけでない、「芯」に「核」のあるズズンという響きだ。そしてコステロの声のなんと寂寥感に溢れることだろう。
例えばおおたか静流"In A Silent Flow"の”オコジョ”の地殻の下から突き上げるような、うねるような、シンセ・ベースの暴れっぷり。傍若無人とはこのことだ。そして宙に舞う静流の巫女のような歌声。
極め付きは、コーネリアスのSensuous。表題曲もさることながら、"Fit Song"のドラムスが圧巻。今までもドラムの皮の張り具合がわかるようなその弾力感に高揚感を覚えたが、今やその躍動感は常軌を逸している。笑 気持ちよすぎるじゃないか。
参ったなあ、これじゃあきりがない。
正月早々、とんでもない訪問者があったもんだ。笑
そう言えば、アナログのインプレッションを書く予定だったけど、ここまでガラリとシステムの音が変わってしまうと、今更TL1501a以前の音を思い出して書くのもナンセンスだ。笑 改めて1501a導入後のアナログ音を”おいおい”書くことにしよう。
ま、そのうち、ということで。to be continued....