ファルーク・バルサラの数奇な生涯

土曜日は近所の一軒家レストランで、家族でキレンカの宴。

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和食風フレンチとでも呼ぶべきだろうか。銀杏の「つきだし」から始まって牛頬肉の煮込みに至るまで、子供たちの近況を聞きながら供される皿々を楽しんだ。

印象に残ったのは前菜の「チーズ風味の茶碗蒸し」。ありそうでいてお目にかかることのない美味である。

ごっそーさん。

日曜日の午後は、巷で噂の「ボヘミアン・ラプソディ」。「なにそれ?」とのたまう家人を連れて近所の映画館で鑑賞。(いまさら!)

怪獣酒場のおやっさん(笑)の好意的な評価に始まり、職場の女性も絶賛するので、重い腰を上げた?次第。

以下ネタバレを含むのでご注意。

TVで紹介される観客のような感情移入はとてもできないが、冒頭(とラスト)の、エキストラの画像とCGをミックスして作ったというウェンブリースタジアムの聴衆の映像には目を奪われる。


1985年のLive Aidの映像から1970年代初めまで時間を遡り、パキと嘲られながら空港のバゲージ荷役をしていたペルシャ系インド人の若者ファルーク・バルサラが、Smileというバンドの追っかけから、Voが脱退した後にこれからどうしようかと呑気に相談するブライアンとロジャーの前におずおずと現れ、「まずその歯をなんとかしなきゃ」といわれて(笑)引き下がりかけながら、意を決して素晴らしい歌唱力を披露し、そのVo.におさまるまでの展開は小気味よい。

ブライアン、ロジャー、ジョンの3人を演じるキャストもよく特徴を捉えているし、ロックバンドのサクセス・ストーリーとして、安直だけどこんな感じなんだろうな、と納得させられる。

移動用のバンを売り払ってレコードを自主制作するくだりも、やる気のないレコーディングエンジニア(と最初のうちは他のメンバーも同様に描かれる)を横に、フレディーが工夫しながら手作業で音響効果を練り上げていくさまが興味深い。(だから初期のアルバムは音が悪いのか?しかしこの映画にはフィクションが織り込まれているそうなので、鵜呑みしてはいけない?)

セカンド、サードの録音風景は出てこないが、農場の一軒家を借り切って製作した「オペラ座の夜」の録音風景は、映画のシナリオ上もゲイのマネージャーがフレディに近づくシーンとして重要な役割を果たすが、同時にタイトル曲のオペラ的コーラスの制作過程も現在のように電子的に簡単に加工できるわけもなく、徹底的に原始的かつアナログで、面白い。(あのコーラスを、あんな即席のパティションで囲った録音ブースで録っていたとは!)

口パクを強要するBBCへの悪態や、オペラ座の夜のプロデューサーとのバトルも痛快だが、後者はフィクションだそうだ。笑

スターダムを駆けあがるにつれ目に余り始めるフレディの専横と他のメンバーとの溝、フレディ自身の性癖とおそらく生涯有していた人種的マイノリティとしての引け目、ゲイのマネージャーの手引きによる荒廃した生活(と映画では描かれる)などもろもろの要素によって孤立したフレディは、他のメンバーと袂を分かち、HIVという病を得るに至るが、LIVE AIDS出演のオファーをきっかけに他のメンバーと「より」を戻し(実際にはフレディのせいでバンドが解散状態にあったわけでもなく、各々が行き詰まりを感じて「停滞」していたらしいが)、過去の遺物であったQueenを伝説のバンドとして蘇らせた、というのが後半の粗筋。

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どこまで真実かは別にして、この映画で描かれる「鼻につくフレディ」は彼が言う通り「最低のクソ野郎」でどうしようもないが、ファルーク・バルサラの数奇な生涯という映画として観れば、これはこれで一定の評価を置ける、そんな感じかな。

フレディ役ラミ・マレックの熱演は買うが、上顎を強調するためという義歯はいただけない。ただの出っ歯にみえてしまう。それにフレディの野性的な眼光、表情は復元できていない。

それでもライブ・パフォーマンスの再現は見事だし、他のメンバーとのやり取りー例えばフレディが新居を立てたときに招待したロジャーに「(この家)どう思う?」と聞くと、(短髪・口ひげスタイルのフレディを見て)「ゲイ?」と答えるところや、メンバーが(ベースとドラムのリズムから)ディスコ調ととられかねない”Anotherone bites the dust”を巡って議論しているときに、「ビレッジ・ピープルかよ?」と揶揄するところなど、大いに笑った。

1970年代から1980年代までリスナーの変化に応じてヒットを生み続けたバンドのなかでもがくマイノリティのお話と整理するのはあまりに月並みで興醒めだが、正直な感想はそんなところ。

僕の中でQueenはハイスクール時代のⅡとⅢが最強にして十分なので、その中から2-3曲聴けただけでもよしとしよう。

by windypapa | 2018-12-11 11:08 | 映画 | Comments(0)

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