さて長期逗留を決めたBlack WidowことレヴィンソンML-1だが、このフォノイコの素晴らしさにあらためて感じ入る。
LCRフォノイコの音に慣れた耳に、バックノイズの圧倒的静寂感と虚構を排した再生音が新鮮に響く。
Lyra Argoとの相性は抜群で、音溝から掘り出した圧倒的にワイドレンジな音像を、余すことなく空気振動に変換し、目の前に再現する。
これ以上自画自賛の陶酔に溺れる無粋は憚れるので、密かな楽しみとして胸の内に止めよう。クックック。
そんな自慰的リスニングの中でも、僕の目は鋭くML–1のフェースプレート上のトグルSWを捉える。
High と Lowのゲイン調整SWだ。
そう、これがあれば出力不足に悩む誰かさんを救済できるのではなかろうか?と心の広い俺様は考えたわけだ。笑
一度は「男にした」といいながら、その後冷静な見直しで評価を下げたSPU-G(0.05mv出力)を取り出して、プラスティックカバーを外し、3.1gの針圧を掛けてヴィニル盤に乗せてみよう。
(一般的にカートリッジのボディを外すと開放感が出て低域もよく伸びる、という風説をまともに受けて試しただけのこと (^^ゞ)
もちろんゲインはHighに上げる。
Awesome!
なんてこった、これは畏れ入った。
衣食足りて礼節を知ると言うけれど、まさにSPU-Gの、昇圧足りて真髄を知ることになった。
十分に昇圧されたSPU-Gの底力を見よ、諸君。
貧血に悩まされていたアスリートが、新鮮な酸素とヘモグロビンを大量に補給されて蘇り、フィールドを縦横無尽に駆け巡るかのようだ。
現代的にワイドレンジなArgoのような超低域は出ないし、音像も細かいところは端折った感じは否めないが、トータルで見せるアナログ世界の親しみやすさ、耳心地のよさ。
特に尖がらない弦楽の音の穂先の気持ち良さには、安心してソファに身体を沈めることができる。
プラカバーが外されて黒仮面のような精悍な顔つきに変わったSPU。
低出力に身をやつしていた時分は、オークションのマーケットに放出することも頭に過った(笑)が、ああこれで救われた。
しばしオーディオを愉しむ友が増えたようだ。笑