寒い国から来た男

梅雨入り前のある晴れた昼下がり。
郊外の駅から住宅街を辿り長い坂を上って来た男は、目的地のオルレアの咲き乱れる庭を眺めながら息を整え、玄関ドアのチャイムを押した。
勢いよく走り出た大型犬を制しながら出て来た主人が、しげしげと男の顔を眺める。
初めまして。私はユーリ。ユーリ・べリンガー。音の館から参りました。
ああ、待っていました、と頷く主人と握手を交わし、早速階下に通される。
そこは小さな窓以外日の光が入らぬ空間で、他の「音楽家」たちがすでにスタンバイしていた。
ガラス管状の瘤がいくつも体から飛び出している奇ッ怪で古典的な佇まいの男がコンサートマスターらしい。
そのコンマスはユーリを一瞥し、咳をこらえながら素っ気なく握手を交わす。
コンマスの脇で這いつくばるように五体を支えている巨大なウシガエルのような男は、ちらりとユーリを一瞥しすぐに視線をあらぬ方向に戻す。
どうやらこのウシガエルが皆のエネルギー源らしい。
コンマスの露骨に品定めするような視線を感じながら、隣の美しい女性二人に近づく。
うふふ、あなたが調律の方ね?私はミデン、この子はエナ。デジタルのミューズなの。あら、あなたの目にも同じ光が見えるわ。
ふっ、ぼくは両方の痛みを知る男さ。それはさておき、よろしく。
その脇で巨大な岩盤のような胸板を反らし皆を睥睨する、漆黒の衣を纏う男が、見下すような視線で握手に応じる。
俺はレヴィ。俺の鳴らせない低音はない。上流さえしっかりしていればな。とウィンクを寄越す。
自信過剰な男らしい。レヴィの横に視線を移すと、やはり古典的なたたずまいの黒衣の僧侶が二人、ユーリを窺っている。
お目にかかれて光栄じゃ。高音域の司祭、ヘリオスとヘカテじゃ。よろしく頼む。
恭しく二人と握手を交わし、初めて正面の神託の丘デルファイに聳えるアポロンを仰ぎ見る。
角度によって見るものを威圧するようでもあり、また包み込むようでもある、この部屋の心臓部たるモニュメント。
このモニュメントを響かせる音楽が、本来の美しさとエナジーを喪ってしまったので、調律してほしいというのが今回の依頼だ。
おや、またコンマスが咳き込んでいるな?ううむ。
では取敢えず、音楽を奏でてもらおうか。
・・・

擬人法で書けばこんな具合で始まるのだろうか。
今週は、先日到着したユーリことBehringer DCX2496 Ultra Drive Proをシステムに接続し、導入効果を測っているのだ。

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まず最初の日。
RCA/XLR変換コネクタを使って機器を接続し、簡易版マニュアルを見ながら2wayで分配周波数(左ch850Hz、右820Hz)を設定。
中高域は、従来のネットワークでつなぎ、エナことDELAの収納ソースを再生する。

さて、その音やいかに。

・・・・ウンともスンとも言わない。(◎_◎;)

おっかしーなあ。と点検するがその夜は原因が分からぬまま終了。

翌日ダウンロードした取説に目を通しながら唸っていると、ふと目に入って来たのが「ミュート」機構。
曰く、ミュートがかかっていると各chのLED表示のボトムが赤く点灯する由。

ふと横を見れば、我が家のユーリ君もしっかり赤く光っている。(^^ゞ
どうやらセッティングの時に誤ってミュートボタンを押してしまったらしい。お馬鹿さん。

ミュートを切って仕切り直し。さて無信号時の雑音は?・・・・RCA分配器を使っていた時より抑えられてはいるものの、ブーンというノイズは低く聞えてくる。m(><)m
音はどうだ?DELAのソースを駆け足で再生する。

低域と中高域とのつなぎに不自然さはなく、音そのものも及第点だが、何か違和感の残る音だ。DCX内部のAD/DA変換により、デジタル臭さが出ているのだろうか?
と不安がよぎる。

翌日・翌々日も同じ。

ああ、やはりユーリ・べリンガーは我家のヴィンテージとは水が合わないのか。

せめてノイズがもう少し減ってくれたらなあ。

とボヤいていたら、上流のコンマスことLCRフォノイコ付プリアンプの電源電圧・周波数の調整が閃いた。

もちろん、以前の環境で調整を行っているが、チャンデバという異物が混入してきたのだ。ここはやり直すべきだろう。

早速、ウシガエルこと電源プラントP600の電圧を調整するが、100V~120Vの間で動かしてもノイズレベルは変わらない。(@_@;)

次に周波数。現在の60Hzから上げるとノイズ量が下がり、64Hzあたりが最適となる。60Hzより下げるとノイズが逆に増える。

これでノイズはだいぶ改善したが、レヴィことMark Levinvon ML3の片側ch入力を抜くと、逆chのブーンというノイズが止まるので、まだまだループハムノイズを根絶しきれていないことになる。

中高域は、モノラルアンプ(ヘリオスとヘカテ)駆動のおかげだろうか、ブーンという音は拾わない。

かくなる上は、①低域もモノラルアンプ駆動にする ②チャンデバとML-3の間にライントランスを入れる ことを試してみようか?

翌日、デッドストックのライントランスを手元に置いてシステムに点火し、デフォルト状態で無信号時の雑音に耳を澄ませる。

・・・・おや? ブーンという音が聞こえないぞ?接続を検めるが、ノーマルだ。面妖なり。

音を出してみる。

・・・ほほお、だいぶほぐれて来たではないの。これなら脈あり。上等だ!

ということで、ライントランスは納戸に戻り、ユーリはしばらく手元に留めることになった。

しかし、ループハムはどこへ行ったのか? まるでインフルの咳が収まるように終息してしまった。ループハムのヴァイルスがいて、コンマスとレヴィの間で猛威を振るっていたのだろうか?

よくわからない。

よくわからないが、ノイズがここまで抑えられるなら、理由は何であれ、文句はない。

上機嫌でヴォリュームを上げ、デジタル・ミューズの歌声を聞く。Beatlesハイレゾ音源からペッパー軍曹と白アルバム。うほほーい。ヽ(^。^)ノ

これは素晴らしい。

どうかヴァイルスが戻ってきませんように。


by windypapa | 2018-06-08 15:41 | オーディオ | Comments(0)

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