ハイ。俺はタンソボーのC。
先週末にこの家に届いて、冷蔵庫の中で消臭活動をするのか炊飯器に入って米を旨くするのか、いずれにせよ仕事に取り掛かる用意をしていたのに、こちらのボスはそんな効能書にお構いなしに、俺に銅テープを巻き付けてガラス瓶の中に放り込みやがった。
しかも電気石のショールと詰め合わせときたもんだ。
全く何を考えているのやら。
きっとネット上のいい加減なハナシを鵜呑みにして仮想アースやら何やらをこしらえようって肚らしいが、へん、そう簡単に運んでたまるかい。
おっ、なにやら不満そうな顔してこっちを睨んでやがる。全くせっかちなオヤジだなあ。そんな簡単に結果が出るなら世話ねえだろ。それよりさっさと俺をこっから出して冷蔵庫の中にでも入れてくんな。
あれあれ、結局PSオーディオたらいう電源プラントのアースに俺をつなげてどこかへ行っちまった。
チッしょうがねえなあ。ボッとしてたらチコちゃんにしかられちゃうから、ちょっと診てやろうかい。
おッなんだPS、おまえちょっと熱があるぞ。そんなとこで気張ってないでちょっとこっちへよこしな、その無駄な電荷。
そうそう、肩の力を抜いて。
・・・なんて話がガラス瓶の中であったかどうか。地下室に残されたカーボンとトルマリンのオブジェの内部で徐々に化学反応が進行したのか、よくわからないが、設置から3日たった水曜日の夜、システムに電源を入れて聞こえてくるノイズが随分と静かになった。
ああ、またプラシーボか。そう思って木曜の夜も電源投入後のノイズに聞き耳を立てるが、確かに静かになっている。
うーむ。世に言う三年殺しではないが、この炭素棒君とトルマリンちゃんが何らかのツボを押さえることには成功したようだ。
Well Done! 信ずるものは救われる ってか。
というわけで先日入手したヴァント指揮ケルン放送響によるブルックナー交響曲第8番(ハルモニア・ムンディ)にZYX Atmosの針を下す。
1979年に録音されたもので、数年前に入手したCDボックスの1枚と同じ録音だが、聴き比べるとその差は明らかだ。
もちろんコンテンツは一緒だが、ハルモニア盤の場合、針が下りて原始霧が始まるまでの無音状態の溝をなぞるときにして、すでにリスナーは演奏会場の中に引き込まれていることに気付くだろう。
そして冒頭の弦楽器のトレモロから不気味な中低奏音、さらにその後にくるトゥッティへの道程すべてに、五感をゾクゾクと刺激する成分がちりばめられているのだ。
またしても一本取られた。
そういう顔は緩んでいるのだが。(笑)
ところでうちのリリーお嬢さんはどこで道草食ってんのかなあ。まったく・・・。
*しかし今気づいたけど、CDもヴィニルもヴァントの左手を胸元の右襟を摑むポーズは同じだな。癖なのか、キメのポーズなのか? (笑)