I'm Back!

9月28日、李さんとともにムンさん工房を訪れる。
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LCRフォノイコ付プリアンプの最終調整だ。その実力は前回の訪問でほぼ確認しているが、今日は李さんが最後の調味料を用意してきている。まずはフォノイコ初段の6SN7とライン部Baのそれぞれのグリッドリーク抵抗の交換だ。オリジナルの作品は両方ともAllen & Bradly社製の抵抗を使っているが、それをオーディオノート社製と英国エリー社製のものに交換する。さらに出力端子へのケーブルを同じウェスタン社製の少し太いケーブルに交換する。そして最後は英国RS社製ヒューズへの交換。その状態で試聴すると、李さんの耳には少し音が薄く感じられたようで、僕に「広く薄い音と中域中心に厚い音とどちらが好みか」と難しいことを聞く。「うーっ、厚い音」と答えると、エリーの抵抗をAllen & Bradlyに戻す。手持ちのエリー抵抗に最適の抵抗値のものがなかったようだ。途中で顔を出した金さんも興味深げにグリッドリーク抵抗の交換による音の変化に耳を傾けている。
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写真上下の白っぽい色の抵抗がエリー。オーディオノートはえーっとどこだっけ。
緑色の抵抗は韓国製。音質にあまり関係のない電源周りに使っている。A&B抵抗はもともと誤差が大きいのと熱で抵抗値が変わるため、だそうだ。

李さんのチューニングポイントは4つで、抵抗はカソードとグリッドリーク、キャパシターはバイパスとカップリングだという。CRの製造者によって異なる音の傾向をうまく掴み、適材適所で組み込むことが大切だという。このあたりは真空管アンプならではの楽しみであろうか。

そうしているうちにムンさんのチングが遊びに来て、試聴する我々を置いて二人で刺身を肴に焼酎を酌み交わし始めている。このあたり、アバウトで好ましいといえば好ましいのだが、今日は大事な最終確認なので僕は飲んだくれるわけには行かない。まあ一献、のお誘いを丁重に辞退し、耳に集中する。

最初に聞いたときよりも少し大人しくなったかな、と首をかしげる李さんだが、僕にとっては前回同様、密度の濃い、ゆったりとたゆとうようなサウンドだ。リッキーリーの「パイレーツ」がまるですぐそこで奏でられるような、ゾクゾクするような臨場感で再現される。

こんなすごい音が、部屋に持ち帰って聞いても同じように再現されるのだろうか、などと少し不安がもたげる。そうこうするうちに最終の試聴はお開きにして僕の部屋に運び込む段だ。皆に手伝ってもらって重たい電源 部と本体、リザーブの真空管などを僕のアパートの部屋に運び込んだ。
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一人になって一息つき、取り敢えずターンテーブルを含めて結線してスウィッチを入れると、ブーンと盛大なハムノイズが発生。ターンテーブルをひっくり返して裏蓋を外すと、フォノケーブル接続基板のアース線が外れかけている。基板も劣化して皮膜が剥がれかけてきている。アース線をアースポイントのネジに直止めし、もう一度接続するとハムは大幅に減少したが、左右chの音量バランスが取れていない。さっき目にした劣化基板を思い出し、もう一度裏蓋を外してトーンアームからの細いケーブルの基板への半田付けをやり直してみるが、効果は無い。右chのワーフェデールのカットオフコンデンサーの接続部分に接点回復剤を塗布し真空管のピンを磨いてみるが、バランスは変わらない。

そんなことをしているとオーディオと全く関係のない友人から連絡が入って一杯やることになる。この続きはまた明日、ということに。

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明日はあっという間にやってくる。前夜の友人との楽しい語らいを思い出しながら、ゆっくり目の朝食を摂り、体をほぐしてからスヨンガン沿いのルートをジョギングして昨夜の酒を流し出し、シャワーを浴びると午前が終わる。Time flies.

午後は李さん宅にレコードを拝借しに行く。日本から持ってきた10枚だけだと面白くなかろうと、李さんが貸出しと言うか、贈呈を申し出てくれたのだ。

ついでにプリ電源部のRE604の互換球PX4ワンペアとCa, Ba, 101Fリザーブ球をそれぞれ1本永久拝借する。
李さんが部品取り用に入手したドイツの古い計測器とパワーアンプの内部を見て、ドイツのクラフトマンの理詰めの構成力と配線技術に嘆息をつく。

李さんのシステムから出る音は更に洗練された気配で、力強さと繊細さを兼ね備えた太いタッチの音が悠々と部屋を満たしている。畏れ入りました。

夕方降り出した雨の中を、レコードを抱えてアパートに帰る。高校生の頃は当たり前だったそんな風景が、いまや希少種のものとなっていることに気付き、失笑する。

簡単な夕食を作りながらターンテーブルにレコードを載せて音楽を流す。左右のアンバランスはボリュームで調整すれば取り敢えず問題ない。
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ジョニ・ミッチェル「Miles of Aisles」、ゼルキンのベートーベン・ピアノソナタ、イーグルス「One of These Nights」・・・僕にとって懐かしい、愛着のあるレコードたち。
ターンテーブルにレコード盤を置き、指でアームを下ろすという作業が、面倒どころかとても新鮮で気持ちよい。
李さんに借りたレコードではオスカー・ピーターソン「Oscar's Choice」が出色。なんとも気持ちのよいスウィングを聴かせてくれる。

アパートの大きく開いた窓面に夜の帳が降りると、僕は部屋の明かりを絞ったまま、音楽信号が内部を飛び交う硝子球のオレンジ色の灯りを楽しんでみる。プリ17球・パワー8球の計25球の灯りと赤と青のパイロットランプは夜の工業地帯のミニチュアモデルのようだ。

こんなときに聞くマイルズ・オブ・アイルズの「ケース・オブ・ユー」や「サークル・ゲーム」は古い友達のように心にすっと入ってくる。
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左右のアンバランス確認のためにデジタル入力を試そうと思っていたのだが、久々のアナログに嵌ってしまい、そちらはすっかりお留守のままになった。
なんとも愉快なプリが仲間に入ってきたものだ。
僕の心にもオレンジ色の灯りがほっと点ったような気がするのは、気のせいだろうか。

明けて月曜日。今宵こそはと帰宅するなり夕食もそこそこにデジタルをつないで確認すると、アナログ同様左右chの出力はアンバランスだ。カートリッジ自体やアーム内のケーブルの問題ではないことが取り敢えずわかってほっとする。
しかしそれよりなにより、Mpd Voyage-DACからの音がまるで生き返ったように伸び伸びと鳴っている。今まで聞きづらかったソースも高域のきつさから開放されて、なんとも分厚く、屈託無く鳴っていることに驚いた。何と言うか、音圧がまるで違うのだ。そしてストリングスと弓が擦れるときの毛羽立ちと楽器の胴鳴り、そのリアル感。ボーカルの発声前にフッと漏れる息継ぎの音。無音の時にも闇の向こうに間違いなく何物かが息を潜めている、そのざわざわと肌を刺激する感触。

アナログの場合はさらにそれが増幅して伝わってくる。

なんとも愉快なことになってきた。
by windypapa | 2013-09-29 00:02 | オーディオ | Comments(0)

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