ワーフ&ブラッキー

土曜日は久々にまとまった雨が釜山の街を洗った。

オイラが住むアパートは開口部の8割~全面が窓ガラス、というおサレな作りなので、雨天の眺めもまた楽しからずや、なのである。かはは。

こんな日は音楽を楽しもう。

Wharfedale SFBも Western 271A シングルアンプも、適度に電気信号が行渡り、ウォームアップが進んだようだ。

前に「解像度が高く、張り出しも良い、自然な音色」と表現したが、そこに「深み」や「落着き」というニュアンスが加わった。

Magdalena Kozena "Ah! mio cor-Handel Arias"は、目を閉じて聴いていると演奏の場に吸い込まれるようであり、かすかに香る黴の臭いと適度に湿った硬い木の床、そして石の壁に囲まれた空間が頭の中に浮かんでくる。そしてその中にぽっかりMagdalenaの唇が浮かんでいるのだ。
ワーフ&ブラッキー_f0068878_20551166.jpg


KRKのモニターSPで聴いていたときも、音場の広がりと奥行は感じられていたのだが、Wharfedaleと比較すると、実像に対するホログラフのように小さなそれであった。

ちょうどStar WarsでR2-D2が映し出すレイア姫のような。そういえばキャリーフィッシャーはどうしているのだろう。

対するワーフは、実に堂々と等身大のMagdalenaを描き出す。しかも少しウッディな、色で言えばダークブラウニーな色彩感で。

なんだ、エンクロージャーそのまんまじゃん。

いや、確かに視覚的なイメージが先行しているのかもしれないが、でも「カラフルで軽やかな音」ではなく、「色彩感の薄い淡白な音」でも「油彩絵の具を塗りこんだような重厚な音」でもない。

音に輪郭があるとしたら、太くて濃いのだけれど、でも細かなところまで描き出す、ちょっと矛盾した音なんだ。しかも大人っぽい。

もうひとつ言えるのは、分析的に聞く必要の無い、聞き疲れしない音であること。

Magdelenaのヘンデルのアルバムを1~2曲聴くことはあっても片面あるいは両面(ヴィニル換算)聞き通すことはかつてなかった。有体に言えば途中で飽きた。

なのに、ワーフ×ブラッキーでは片面を余裕で聞かせてくれる。いや、このCD、こんなによい曲が入っていたのね。飽きません。

こうした音色の醸成には、ワーフとブラッキーだけでなく、O式DACとワードクロックの功績が大である。
ワーフとブラッキーだけなら音像をおそらくもっと太筆で大胆に(大まかに)描きだしたことだろう。

O氏はクロックを手渡すとき、こうおっしゃった。
「最初はキツイ方向に聞こえます。そう聞こえたらある程度修正がきくので言ってください。」

またこうも言われた。
「CLASSICを好まれる方はよいが、JAZZやROCKを聞く方の反応は分かれます。」

たしかに解像度が上がればすべてよし、という単純な構図ではない。今まで聞こえなかった音まで聞こえてくれば、新たな発見に一時的な興奮を覚えるだろうが、音が薄く広く拡散し細密画を描き出してしまうと、なんだか興も醒めて飽きてしまうのだ。

今回のケースでは、クロックによる高解像度と音像の広がり効果にワーフとブラッキーのクラシカルな音の佇まいが相乗されて、よい塩梅を醸し出しているのかもしれない。

ワードクロックの凄さは、例えばラトル指揮VPOのベートーベン第9交響曲第4楽章で、今まで気に留めなかったトライアングルの音色を描き出したりするところだ。

クロックを外して同じところを聞けば、たぶんトライアングルの音を識別できるのだろうが、普通に聞いていて「音色」として聞き取れるというのは、今まで無かった。

こんなところに、O氏によるDACとワードクロックの威力をひしひしと感じるのであった。

そういえばDACについて今まで何も説明をしていなかったなあ。忘れないように以下を記しておこう。

本邦初公開のヌードも披露!←違った、1月にも脱いでたのね。ごめん。
ワーフ&ブラッキー_f0068878_7102816.jpg

1.DDC基板:フェーズテックのUSBインターフェイスDD基板 UDIF7搭載

2.DAC基板:藤原さんのDAC8741-2 (short)DAC基板使用。DACチップはWolfsonのWM8741で、片チャンネルあたり2個並列(4パラ)で使用。
(LINN Akurate DCに使用されるDACチップと同じ)

3.アナログ段:金田式回路基板 オプションで専用ディスクリートアナログ基板、超高速のLME49600を使った出力段基板付属。
 
4.入力:SPDIF同軸が2系統、UDIF7経由のUSB入力の3系統。SPDIF同軸では24bit192kHzまでの入力、USB経由では 24bit96kHzまでの入力が可能。

5.デジタルフィルター:トグルスイッチで3段階で切替可能(デフォルトは真ん中ポジション)

6.UDIF7基板が持つ独自の機能も使用可。USBからデジタル信号をSPDIFデジタル同軸で出力することも可能。
UDIF7基板上のスイッチ#4 を切り替えれば外部マスタークロック(44.1kHz、88.2kHzであれば22.5792MHz、48kHz、96kHzであれば 24.576MHz )による動作可能。データフォーマットはライトジャスティファイ24bitに設定。

7.トランスはRコア、レギュレーターは、アナログ段がTL431Aシャントレギュレータをつかったオペアンプフィードバックをかけた正負出力、デジタル段は5V、3.3VはDACチップ、デジタル入力段ともに独立したLM3080を使った定電圧回路で供給。

8.帰還用フィルターコンデンサ:SEコンデンサ使用

へへへ、愛いやつじゃ。
Commented by 宗助 at 2012-04-25 21:31 x
ワーフェデールの調子が出てきたようですね。

これはどなたかオーディオ評論家が書いておられましたが、私も高品質ソフト(特にハイレゾ等)をビンテージシステムで聞くと古い機器の新しい魅力が現れるように思いますね。

もう一つ、ウエスタンのパワーアンプをレビンソンのプリで駆動するというのはお試しになりましたか?(レビンソンML7はそちらにあるんでしたよね) これも私はとても気に入ってる組み合わせなんです。ウエスタンのプリとパワーを組み合わせるより少し知的というか分析的でカッチリするんですけどね、魅力的です。

でもやはり無意識にそのSPに一番合いそうな音楽を選ぶもんなんですね。アルヒーヴのコゼナのヘンデルなんて聞かないでもあいそうですもんね。

それにしてもメゾのマグダレーナですか、うーむ
Commented by windypapa at 2012-04-25 23:35
>高品質ソフト(特にハイレゾ等)をビンテージシステムで聞くと古い機器の新しい魅力が現れるように思います
なるほど!我が意を得たり!

でも、クロックが44.1kHz固定なんで96や192は聞けていないんです・・・

ML-7は今、里に帰してます。WE272Aプリがあんまり素晴らしくKRKを鳴らすので、不憫になって帰しました。

いつもの思慮の足りなさですね。残しておけばWE271Aと競演させられたのに。
by windypapa | 2012-04-24 21:22 | オーディオ | Comments(2)

好きな音楽やスポーツの話題

by windypapa