チャイルド44
2012年 04月 05日
といってデザインやスタイル、ファッションがどうでもよいと思っているわけではない。むしろ自分なりに納得して身に付けるもの、目や耳や口に入れるものを選びたいと思っている。
今年2月、一時帰国の折にコートを求めて回ったが、いまどきはウェストを絞ったショート丈の黒いものばかりで、ロング丈のベージュのトレンチがなかなか見つからない。
いつからコートはひよっ子供のものになったんだい?
ただでさえ嵩高い図体も選択の間口を狭め、結局池袋の西武まで出掛ける羽目になった。
普遍的な美しさを宿すものこそ“いとおかし”、斬新で目を惹けど飽きの予感宿るもの、“あぢきなし”。
燃費は格段によくとも、昨今のクルマの造形には首をひねる。96年式のROVER620にいまだ乗り続けるビンボー人が何をか言わんかだが、もっと物欲をそそるクルマは作れないものか?昆虫の目のようなライトにやたらエッジを利かせたフロントマスク、大きなマッチ箱のようなボディライン、かと思えばやたらと丸い女子高生文字のようなシェイプに、往年の名車のデザインの焼き直し。若者じゃなくてもクルマ離れもむべなるかな。
かつて北米から帰国する折、(アナログレコードを大量に持ち帰るために)蔵書の大半を処分してからは、雑誌・書籍を所有する営みから解放され、新刊本を手にする機会も減り、ブックオフやネットで検索する習慣が定着した。新聞や雑誌の書評で目を付けた新刊書が、1年かそこらでSecond Handマーケットに流れてくるのを待って購入すれば事足りる。書店の店頭で手にとってよほど購買欲に支配されない限り、その“悪癖”は崩れない。
出版関係者の方にはまことに申し訳なし。
そういう経緯で、長らくウェイティングリストに載っていたミステリー、「チャイルド44」をブックオフで見つけて即ゲット、ようやく読み始めた。
と思ったらたちまち物語に引き込まれ、週末もアパートに引篭もって上下巻読了。1979年生まれでこれだけの物語をものにした著者のトム・ロブ・スミスには、思いっきり脱帽する。
2008年の話題作だから、ミステリーファンはとっくに読まれたことと思うが、先に述べたようなセコハン指向、時の歪みを気にすることなかれ。
主人公の置かれる状況といい、彼が追いかける事件の猟奇性といい、まことに重苦しく陰鬱なお話なのだが、まるで映画を見ているようなストーリーの組み立てと、軽やかなカット割りで飽きることがない。音楽で言えば哀調を帯びた無調音楽が暗く太い旋律を織り重ね、クライマックスに向かって大きな主題を謳いあげる、そんなイメージであろうか。
次の帰国の折には続編を手に入れることにしよう。
釜山の桜は一気に花弁を開き、春も盛りを迎えている。

Samsung Galaxy Noteで撮影 携帯だからといって侮れません。
韓国だ日本だ、釜山だ横浜だって違いを問題にしない桜のチカラみたいなものを感じます。
東京の桜も、そちらと同じくらいの開花ですね。
この週末が見頃だと思います。
そういえば、たしかに重厚なトレンチコートって、めっきり見かけなくなりました。
ぼくも勤め人時代に愛用していた2着のベージュのステンカラーコートのうちの1着の処分を、つい先日思いとどまったばかりです。
週末は弁当を持って近所の山に登り、花見で一杯と行きたいところです。