鷲は舞い降りた その2

このところ記録する日にちがBack dateすることばかりだが、備忘録代わりなのでお許し願いたい。

先週木曜日、木浦へ行ってきた。
木浦は韓半島西南、黄海に臨む歴史ある港町だ。古くから中国・日本との交易で栄え、かつては日本人街も栄え領事館も置かれていたという。
儒達山(ユダルサン)という岩山を背に、リアス式海岸特有の島が点在する海が開け、海の幸に恵まれる美しい街だ。
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全羅南道は韓国の中でも食が有名で、嫁をとるなら全羅南道からとも言われるほどだそうだ。
しかし実際に木浦出身の奥方を娶った方の話では、木浦はアンモニア臭の強いエイの刺身や、魚醤のような下味のキムチなど全羅南道のスタンダードから外れてユニークなものも多く、一般的な韓国人でも敷居が高く感じる場合があるとのこと。

なるほど、入り口から中を眺めただけではわからない奥深さがあるのだね。しかし昨年訪れた「ハンミル」の昼食は、素材の味を大切にする古来の韓式料理の素晴らしさを私に教えてくれた。
韓国料理が唐辛子の赤とオレンジ色に染まる前、壬申和乱前の朝鮮料理は、チャングムが王に供した料理の如く美しく味わい深いものであった。

ところで今年の昼食は、木浦名物のナクチ(手長蛸)。なんだ、また蛸かよと言う無かれ。釜山の蛸とは素材が違う!?
たしかに出てきたセンナクチ(活き蛸のぶつ切り)の活きのよさ!

食いすぎて一緒に出てきたナクチポックン(手長蛸と野菜の辛味炒め)は食べ切れなかった。残念。

ところで週末のルビジウムクロックの試聴はどうなったかって?
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李さん、金さんが覗きこむ中、まずはO式DACの天板をあけ、フェーズテックのDDA基板UDIF7のスィッチを操作し、内部クロックから外部クロックに切り替える。そしてルビジウムのマスタークロックを接続、MPD Voyage経由で音を出す。

「・・・・!」

耳の感度がよいとはいえない私でも一聴ではっとさせられる。

音がいっそう整理され、透明度・静謐感がぐっと高くなり、音場が広がる。
なんだか普通のCDからハイレゾリューションファイルに変えたときの変化にも似ている。
音は細くなるように聞こえてそれは鉛筆でいう2Hで描く細密画になるわけでなく、WE272Aの4B鉛筆の濃さを残したまま細書きになり、シュイーンと伸びていくのだ。

湯島の経験を追体験して「遂に我が家にもマスタークロックの音がやってきた!」と舞い上がる私。

しかし李さん、金さんは複雑な表情。

上記傾向は認めつつ、「ビンテージの味わいと“ニュアンス”が薄れた」という。
李さんに至っては、「SACDやハイレゾはビンテージの音に合わない」とのたまう。

なるほど、太いブラシで描いた絵画のような感覚は後退し、より精密な筆致の絵画に変わることから、太い筆先を愛でる人達の嗜好から少し外れるのかもしれない。

太く熱い表現から、鋭利で冷静な方向に揺れ戻したのは確かである。

だが新たに姿を表した絵画はずっと大きなキャンバスに清々しく佇み、ぽっかりと空に浮かんでいるかのようだ。

私の耳は、この音をもっと聞きたい、と叫ぶ。

「ビンテージ」や「ウェスタン」という約束事は私にはあまり意味がないし、WE271Aの「古典三極菅らしい音」に縛られて太い筆致だけを愛でるのも蒙御免である。

これはライブラリのCDソースを全部聞き直さなければ。いや、ぜひそうしよう。

しかし問題発生。96kHz24bitのソースを再生したらどれだけ彼岸に近づくだろうと試すと、ビリビリの情けない音になってしまう。
そうか、クロックを受け取るときO氏が「44.1kHzだけ・・」と言っていたのはこのことか。
ソースによってクロックが自動転換しないということなのだな。

44.1kHzのCDソースに戻すとまた素晴らしい音を聞かせてくれる。

ううむ。ハイレゾとCDソースを選ぶごとにDAC天板をあけてスィッチを切り替えるなぞやってられねー。
まあ、何か手があるはず。後でO氏に聞いてみよう。

ということで日曜午前中のセッションを終了。3人で南川洞駅近くの「古屋」という名古屋風「ひつまぶし」の店でうなぎを食す。韓国焼酎ももちろん食卓に並ぶ。
とりあえずそこそこの音が出るようになり、Western Projectの第1期が終了したことを祝してのささやかな昼食会だ。

ささ李さん、金さん、飲みねえ食いねえ。ご指導・協力ありがとうございました。
名古屋で修行したという主人の作る「ひつまぶし」は絶品。少し韓国向けにたれを甘くしているが、なんのそれしきケンチャナヨ。ごっそーさん。

でもってここのところフィールド式スピーカーに凝っている李さん宅へ。なんでも先日まで鳴らしていたクラングフィルムのユニットは実はドイツ人がロシアで作ったユニットで正しいクラングフィルム?じゃなかったらしい。ようわからん。

先頃ドイツ製のユニットを手に入れてバッフルも電源部もあわせて完成し、絶品のピアノを聞かせるというので立ち寄った次第。
プリは先日まで私が借りていたドイツ製プリVEB Tonmechanik Berlin、よくみるとフォノイコも新しいものが導入されている。

自信満々でCDをかける李さん。なるほど、音は伸びやかで屈託がなくよく響く。
感想を求められたのでその通り申し上げた。
しかし、ホーンのキャラクターも多分に乗っており、そこから先は好き嫌いの領域となる。
ライブな部屋のチューンも含め、少し高域を中心に調整すれば私の守備範囲に入ってくるかもしれない。

折角だからアナログも聞かせていただく。最初はSHELTER、途中からオルトフォンSPU Meisterのカートで。
アナログの方がCDに比べて高域の響きがゆるめで、大らかに聞かせてくれる。SPUは音に太さもでて好ましい。
このカートはいいなあ。
アナログ再生への憧憬が広がる。 ・・・いかんいかん。

一休みして、EMT製の放送局用コンソールがあるというので見せてもらう。

それはなんとキッチンの冷蔵庫の横で布をかけられ、置き台と化していた。

上に載る果物やら何やらをどけて、布地とアクリルカバーを外すと、おお、まごうことなきEMTのターンテーブル。EMTの文字はどこにも見当たらないが、この面構えはTHE EMT。がっしりした木製キャビネットを開けると中にはぎっしり電気系統が詰まっている。
宝の持ち腐れもここまで来ると笑うしかない。

さらに脇にある古いストーブと見まごうスクラップもどきを見ると、テレフンケンの文字が浮かび上がる。
前に置かれた台所用具をのけて鉄製の蓋を外すと、上はプリ、下はEL34PPのパワーアンプが姿を見せる。

もともとモノラルの品をステレオ構成に変えようと手に入れたらしいが、道半ばで放置してある模様。

だいたいEL34にひとっかけらの興味も持っていないくせに、なぜこのような品を手元に置いているのだろう?
まったくコレクターという人達はよくわからない。

あきれて写真も撮らずに帰ってきた。なんだか機械がかわいそうだ。李さん、クラングフィルムもいいけど、灯台下暗し、手元のお宝をよみがえらせて音を聞かせてくださいな。
Commented by 宗助 at 2012-03-31 18:47 x
横浜も今日あたりはようやく桜が咲こうかというところに風速27米の風。ほんとにハナニアラシノタトエモアルゾですね。

今回はジャック・ヒギンスでも西部戦線でもなくナッチーポックンの話でおじゃまします。
若い頃読んだ伊丹十三の「日本世間噺大系」という本の「芸術家」という短編に、小説家志願の若者が苦心惨憺の作品を先生に見てもらおうとしたところ、先ずはまだ漬かりきらない大蒜の味噌漬を食べさせられる、空腹と辛さで悶絶しそうになると今度は手製の8年物のキムチをふるまわれたら、これがまた頭の毛穴から煙が吹き出しそうになるくらい辛い、しかるに先生は芸術家を目指すものがこれしきの辛さで参るとは何事かと叱咤し、今度はナッチーポックンを勧める。ナッチーポックンの壮絶な辛さの前にはキムチの辛さなど零に等しい・・・
これを読んで私はナッチーポックンって名前も嘘くさいし伊丹十三がでっち上げた究極の辛い物だと思っていたのですが、図らずもウインパパのブログを拝見して、実際に存在する食べ物である事を発見。「ユーレカ」と叫びたいくらいのもんです。
ところで、ナッチーポックンって食べたことはあるんですか、どのくらい辛いんでしょう?
Commented by windypapa at 2012-03-31 23:46
宗助さん、おばんです。釜山も今日は春の嵐のような天気でした。
日本世間噺大系って知りませんでしたが、面白そうですね。今度帰国したらブックオフで探してみます。

ナクチは手長蛸、ポックンは炒め物を差します。例:炒飯=ポックンパプ
ただ、地方によって作り方に差があるようで、釜山のナクチポックンは鍋にコチュカル=唐辛子ベースの香辛料やコチュジャン=唐辛子ベースの味噌と海鮮出汁のスープをあわせて野菜と新鮮なナクチを煮込んで食すものです。一通り食べたら残りの鍋にインスタントラーメンやジャガ芋を主原料とする麺を入れて食べたり、ご飯を入れて焼き飯状にして食べたりします。(韓国ではなんでもこの調子で麺やご飯を入れます。ま、日本の鍋ものと一緒ですね。)

見た目は唐辛子色でいかにも辛そうですが、意外と日本人好みの味で、特にビールとの相性もよく、半島に上陸した当初から贔屓にしています。2週間に一度は昼飯で食べているので、こんど写真アップします。
(いつも撮ろうと思っているのに、鍋が出来上がったらすっかり忘れてがつがつ食べてしまうのです。)

Commented by windypapa at 2012-03-31 23:47
(つづき)
キムチはタレが真っ赤でも辛くないです。深く漬けたものは寧ろ発酵が進み酸味が勝ちます。漬けダレのベースに何を入れるかと漬ける具合で味が面白いように変わります。
食堂ごとに出て来るキムチの味が違うので楽しみです。
力のあるキムチを出す店は、メインも間違いなく旨いですよ。
一度時間を作って遊びにきて下さい。ウェスタン教徒達を紹介しますよ。
by windypapa | 2012-03-31 00:38 | オーディオ | Comments(3)

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